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【今月のコラム】  平成28年9月号(機関紙「春の風」掲載)
 
 1,000字の散歩 26

  上弦の月

9月1日ごろは新月で、月は見えない。この文章が読まれているころは、西の空に三日月が見えているだろう。このころの三日月は、夜の8時過ぎには沈むから、鋭い円弧の月は沈みかけているはずだ。
そして、9月15日が中秋の名月。この日、夕方の6時半過ぎにほぼ真円の名月が東の空を昇る。晴れていれば、ぬっと出てくる鈍く光る月を見ることができる。
 新月から満月の間を上弦の月と呼ぶ。月は弓の弦を下にして昇ってくるが、真南を過ぎると徐々に上になり、西の空に沈んでいく。下弦の月は、満月から新月の間を呼び、弦を下にして西に沈む。月の出は夜遅くで、昼には沈むから、日没後に見かける月の大方は上弦の月である。
 吉田拓郎が歌った「旅の宿」(作詞・岡本みさお)の詩に「上弦の月だったけ」のフレーズがでてくる。フォーク全盛が終わりかけたころの1972(昭和47)に流行った歌で、今60歳台のフォーク世代には懐かしい曲であろう。 

 ♪浴衣の君は ススキのかんざし/熱燗徳利の首つまんで/もういっぱいいかがなんて……………♪部屋の灯りを すっかり消して/風呂上がりの髪 いい香り/上弦の月だったけ/久しぶりだね 月見るなんて…♪

 1969年の秋、27歳だった作詞家の岡本おさみが列車で青森を訪れ、十和田湖に近い蔦温泉の旅館に泊まった。新婚の夫婦は、10畳一間の和室で火鉢の鉄鍋に徳利を入れて熱燗を飲む。ほろ酔いになった妻が、道で採ったススキをかんざしのように髪に挿してくすりと笑う。
 窓から半分欠けた月がのぞく。
「あの月なんて言うんだっけ?」
 聞くと、妻が教えてくれる。
「上弦の月よ」
 食事を終え、妻は風呂に立つ。

部屋の灯りを消して月を眺めていた夫に、風呂上りの妻がそっと寄り添う。ふたりで眺める月は西の空に傾いている。

 ススキが出ていて熱燗をつけるころだから、月は10月だろうか。見えた月が半月だとすれば、昼に昇った月は、飲み始めた午後6時ごろ南の夜空にある。それから、しだいに西の空に落ちて午後11時には沈む。二人が寝てしまったころには、温泉宿に月影はない。

 部屋を暗くして月を眺めることなど、今はない。昔は、縁側に出てしばらく月を眺めていたものである。何を思い、何を考えたかは覚えていない。たまに、その縁側にススキが生けて、膳には団子やゆで栗が乗っていた。
 日本人にとって、月はとても身近なものである。歌謡にかぎらず、月を詠った短歌、俳句は数知れない。
 
 東の野に かぎろひの立つ見えて かへり見すれば 月かたぶきぬ (柿本人麻呂)
 月見れば ちぢにものこそ悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど(大江千里) 
 名月を 取ってくれろと 泣く子かな(一茶)
 名月や 池をめぐりて 夜もすがら(桃青《芭蕉の前の俳号》) 
 菜の花や 月は東に 日は西に(蕪村)
 なにとなく 君に待たるる ここちして 出でし花野の 夕月夜かな(与謝野晶子)

                     (機関紙『春の風』 平成28年9月号)

                     ()エイアンドビ―アシスト 
                             代表取締役会長 野 中 康 行

 

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